池袋の空に浮かぶ、巨大で
その攻略が再開された。
ガトウが命を
今度は自衛隊の人達も一緒だ。
そして、もう自衛隊は無力な存在じゃない。
「13班っ! た、頼みますっ! ……凄い、これだけの熱量を遮断している!?」
野戦服の自衛官が振り向く先へと、トゥリフィリは走る。
巨大な
彼が手にする盾一枚を
砲台からのビームは、一瞬で人間を
「ナガミツちゃん! キリちゃんも! さっきみたいによろしくね!」
「了解だ、班長」
「任せて、トゥリねえ!」
人が生み出し、時代が
全速力で走るトゥリフィリを追い越し、ナガミツとキリコは短く叫んだ。
「キリ、飛べっ!」
「ナガミツはそのまま真っ直ぐ!」
セーラー服の少女が、タン! と線路を蹴って宙へ舞う。
あっという間にキリコは、一足飛びに砲台を飛び越える。彼女が空に描いが
砲台の
同時に、長い砲身がスパッと切断されて地上へ落ちた。
それでも
「見てろよ、ガトウのおっさん」
小さな
そして、爆発。
噴き上がる炎を背に、ナガミツがゆっくりと振り返る。
その横に、静かにキリコが着地した。
トゥリフィリが見ても、以前とは見違えるような二人がそこにはいた。連携も不器用だし、まだまだ張り合う気持ちが捨てきれていない。でも、目的を共有することで、二人の間に
「遅いぞ、ナガミツ!」
「お前が速過ぎるんだ」
「なら、次は合わせろよ」
「ふん、ヘマだけはしない」
互いに
進む先にはまた、砲台の注意を引くべく自衛隊が盾を持ってビームに耐えている。その盾は、ムラクモ機関が提供した
キリノが突貫工事で作った盾は、見事に自衛隊を守っている。
その
だからこそ、彼らが盾である以上に、トゥリフィリ達は
トゥリフィリは砲台の無力化と同時に、へたりこんだ自衛官に駆け寄った。
「大丈夫ですか!?」
「ああ、13班の……はは、腰が抜けてしまったよ。情けない」
「いえ、助かりました。砲火の中では、こっちも手出しができないから……ん? 何かぼくの顔についてますか?」
その場に座り込んだ自衛官は、ぎこちない笑みを無理に作って見上げてくる。
「お嬢さんくらいの娘がね、いたんだ。いや、まだいる……この東京のどこかで生きている。そう、信じたくて、でも信じられなくて……そんな毎日だった」
「おじさん……」
「でも、ようやく自分の仕事ができる、自衛官の使命を
よろよろと立ち上がると、ポンと男はトゥリフィリの肩を叩く。
そうして、集まり出した他の隊と合流して、周囲のマモノを警戒しつつ退路を確保してくれた。その背中を見送り、トゥリフィリもまた走り出す。
皆を守る、そのためにドラゴンと戦う。
ただ生命だけを守って、呼吸と鼓動を繋ぎ止めるだけが仕事ではない。人間の暮らしを、
「言うほど簡単じゃないけど、さ……理想はでっかくだい!」
走る先で、線路は急な傾斜で天へと吸い込まれている。
その根本で、最後の砲台が一人の女性を光の
既に攻撃位置へと回り込んだナガミツとキリコは、砲台へと踊りかかった。
だが、その背を不快な
「飛行タイプのドラゴン!? 邪魔を……してくれないでっ!」
ナガミツとキリコの死角に、羽虫のようなドラゴンが回り込んだ。
だが、二人共振り返らない。
今にもリンを飲み込みそうな光の、その元凶を目指して真っ直ぐ走る。
その背を預かるトゥリフィリが、
重い銃は不思議と、以前よりも速く死を歌った。
全弾命中、ドラゴンが
両手の銃からマガジンを落として捨て、左右の順に素早く交換する。訓練された動きが自然と、肉体に必要な動作を機械的に再生させた。思考を挟まぬ反射の領域で、全神経を走るパルスが筋肉を躍動させる。
「ナガミツちゃん! キリちゃん! 砲台を先に! こいつは……ぼくがっ!」
高周波にも似た高音域が空気を震わせる。
耳障りなそれは、まるで聴覚をやすりにかけているかのように
だが、歯を食いしばってトゥリフィリは走った。
その手はまだ、銃を握って
高速で急降下するドラゴンとの、一瞬の交錯。すれ違いざまに羽が触れてくれば、その場所が薄い血を滲ませる。まるでカミソリの斬れ味だ。
だが、トゥリフィリは迷わず片方の銃を捨てて……残った
片膝を突いて姿勢を安定させ、ターンしてくるドラゴンへと狙いを定めた。
――スイッチ。
断末魔と同時にふらふらと失速して、その死体は線路の上に落ちて動かなくなった。
立ち上がるトゥリフィリに、リンが銃を差し出してくる。
「落としたらどうすんだ? 13班。ま、あたし達がついてる……そんなことにはならないけどな」
「リンさん……皆さんも」
気付けば、周囲の砲台は全て片付けられていた。
そして、戻ってきたナガミツとキリコに挟まれ、トゥリフィリは居並ぶ自衛隊の面々に囲まれる。皆、危険な中で協力してくれた仲間だ。Dzで開発したとはいえ、急造仕様の盾で身を守る恐怖、遮断された熱と光の中で留まるのは怖かったに違いない。
だが、自分たち13班を信じてくれた。
そして、その信頼に信頼で応えることができた。
リンは身を正すと、静かに叫ぶ。
「13班に敬礼ッ! ……頼むぞ、13班!」
自衛隊達の想いをも引き連れ、