歌が、響く。
咲き誇る烈火の
己を引き裂くようにして、歌い続ける。
その姿にエメルは、しばし
無慈悲な
それが今、ただの人間の女のように
少女は膝の上に恋人の
言の葉を思い出して、エメルは静かに告げる。
「アトランティスの民、ルシェの姫君よ。問おう」
少女の名は、アダヒメ。
高度な文明でアトランティス大陸に栄えた、ルシェと呼ばれる種族である。既に国を滅ぼされ、
ここは神話の生まれる場所……今、この時を未来は伝承に
その暴虐に屈して、
アダヒメは歌うのをやめ、エメルへと顔をあげる。
高貴な美しさは今、
猛毒を発する周囲の花々は、あと数分で彼女の命を奪うだろう。宇宙の
日ノ本の滅亡を無言で語るフロワロの中で、アダヒメは小さく呟く。
「わたしの愛した方は、死にました。
アダヒメの膝の上に横たわる少女は、既に事切れている。
この日ノ本を守るため、魔を滅殺して邪を
彼女の敗北は、この国の
だから、アダヒメは泣いているのだ。
身を重ねても繋がれない、交われども一つになれない恋路の最果て。
死が分かつ二人が、互いの生を悲恋で終える
だからこそ、エメルは一歩踏み出す。
「アダヒメよ、お前がもし望むならば……この私が可能性を示そう」
エメルの問いかけにも、アダヒメは眉一つ動かさない。
フロワロの毒はもう、彼女の命の炎をかき消そうとしていた。
それでもエメルは、踏み出す歩調を強くして呼びかける。
「お前の切なる願いを、私は力に変えることができる。
「可能性……未来?」
「そうだ。だが、羽々斬の巫女を愛して慕った祈りが、呪いとなってお前を蝕むだろう。閉じた
恐らく、アダヒメには理解できないだろう。また、エメルも理解を求めていなかった。
ただ、エメルには力がある。
遠い宇宙の果てで滅びた同胞たちに託された、奇蹟の
だから、
だが、エメルに迷いはない。
全生命の天敵である、あの者たちを滅ぼすためなら……
ただ、純然たる憎悪の
そうまでして、戦わねばならぬ相手がいるのに……アダヒメを前に、それを忘れそうになる。エメルが黙って見詰めていると、色を失ったアダヒメの唇が小さく動いた。
「それで、この国が……この星が救われるなら。なにより、
「では、我が
返事は、すでにない。
事切れたアダヒメは、腕の中に抱く恋人の上に崩れ落ちた。
そして、旅が始まる。
それは、あらゆる
エメルは、死を超えて旅立ったアダヒメを見送り、己の存在を再びリセットする。
滅竜の輪廻に導かれ、アダヒメが選んだ世界線。
そこで、アダヒメが現れる直前、一年ほど前にエメルは自分を放り込んだ。
――そして
また一つ、フロワロに覆われ沈んだ世界線が幕を閉じる。
同時に、宿命の戦いが
それは西暦2020年の東京へと、運命の糸を束ねて